液体石鹸と固形石鹸「洗浄力」が高いのはどっち?目的別ハンドソープの選び方

風邪や感染対策に欠かせない「石鹸」。いざ購入するとなると「液体石けん」と「固形石けん」はどちらを買うべきか悩むこともありますよね。

そこで今回は、洗浄力や目的別にみた「液体石けんと固形石けんの違い」についてお話します。

「洗浄」と「除菌」の違い

「洗浄」とは、物質に付着した有機物や異物を除去することを意味します。

「除菌」とは、物質に付着した微生物の数を物理的・化学的又は生物学的作用によって減らすことを意味します。

感染症予防にはウイルスの除菌・消毒が有効とされていますが、洗浄が不十分な状態だと、有機物や異物が殺菌物質を非活性化したり邪魔をすることで、完全に除菌・消毒を行えなくなることがあります。

ハンドソープを購入する際は、「洗浄力」と「除菌力」のどちらも備わっているものを選ぶことが望ましいでしょう。

参考:日本石鹸洗剤工業会洗剤・石けん公正取引協議会『「洗剤の除菌表示」に関する公正競争規約、施行規則及び解説』

液体石けんと固形石けんの違い

「液体石鹸」と「固形石鹸」はどのような違いがあるのでしょうか。まずは原料・洗浄力・刺激性・コストの観点から違いを見ていきましょう。

1.原料の違い

「液体石けん」は脂肪酸カリウムという成分から作られます。脂肪酸カリウムとは油脂を水酸化カリウム(苛性カリ)で反応させたもので、水に溶けやすい性質があります。

「固形石けん」は脂肪酸ナトリウムでできています。脂肪酸ナトリウムとは油脂を水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)で反応させたものです。

油脂というのは化学的に言いますと、グリセリンに3つの脂肪酸がくっついた油分子のことです。石けんによく使われる油脂としてオリーブオイルや椿油、パーム油、ココナッツ油などがあります。

2.洗浄力の違い

一般的に液体石けんよりも固形石けんの方が洗浄力が高いと言われています。その理由は、石けんに含まれる純石鹸分の割合にあります。

純石鹸分とは、石けんに含まれる洗浄成分である脂肪酸アルカリ塩(脂肪酸カリウム・脂肪酸ナトリウム)のことを指します。脂肪酸アルカリ塩は水に溶けると界面活性剤として洗浄力を発揮します。

出典:永岡書店「自由研究 中学生の理科 Newベーシック」

液体石けんは純石鹸分の割合を増やすと固まりやすくなってしまうので、液体の状態を保つために、製品全体の30%しか純石鹸分が含まれていない(純石鹸分の割合が製品全体の30%以上になると石けんが固まり始める)と言われています。

一方、固形石けんは約90%が純石鹸分であることが多いです。つまり、純石鹸分の割合だけを見てみると固形石けんの方が洗浄力が優れているということになります。

3.肌への刺激性

固形石けんの方が肌にやさしい、と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

実のところ液体石けんも固形石けんもそれほど刺激性は高くなく、肌への負担に大きな差はないと言われています。

強いて言うならば、固形石けんに含まれる脂肪酸ナトリウムの方がやや低刺激ですが、製品によって配合されている原料や割合は異なりますから、液体か固形かで比較することは難しいです。

敏感肌や手荒れが気になる方は、液体か固形かよりも無添加・化学合成界面活性剤不使用のものを選ぶようにしましょう。

4.コストパフォーマンス

一製品あたりの単価、純石鹸分の割合(洗浄力)をみると、一般的に液体石けんよりも固形石けんの方がコスパが良いと言われます。

また、泡状石けんは製品全体に対して水分の割合が多く、汚れによっては何回も手洗いする必要があり、洗浄力や経済面で液体・固形石けんよりも劣ると言われます。

もちろん一つの石けんをどれだけ長く使えるかは、各家庭の使い方によって変わります。使用頻度や家族構成などに合わせて商品を選びましょう。

液体石けんと固形石けんのメリット・デメリット

主にハンドソープの種類は、液体タイプ・泡タイプ・固形タイプに分類されます。それぞれに特徴から、用途や使用環境に合ったものを選びましょう。

液体タイプ
  • 洗浄液の濃度が高く、泡タイプよりも洗浄力が優れる
  • 頑固な汚れや臭いを落とせる
  • 泡立て・洗い流しに時間がかかる
  • 洗浄力が高いために、肌への刺激が強く手荒れしやすいことがある

《使い勝手・洗浄力両立派に》魚などの生臭さが気になる、頑固な汚れを落としたい

泡タイプ
  • 泡立て・洗い流しが短時間で済む
  • 液体が飛び散る心配がない
  • 洗浄液の濃度が低く、液体・固形より洗浄力が劣る
  • 頑固な汚れには何回も手洗いする必要があり、コスパ面で劣る

《スピード重視派に》毎日頻繁に手を洗う、小さなお子さんがいる

固形タイプ
  • 液体・泡タイプより石けん分の含有量が多い
  • 洗浄力が高い
  • 泡立てに時間がかかる
  • 前に使った人の汚れや菌が表面に付着することがあり、衛生面が懸念される

《洗浄力・コスパ重視派に》少量でも汚れをしっかり落としたい、コストを抑えたい

固形石けんの正しい使用方法

感染症対策には液体石けんの方が好まれることが多いです。なぜなら、固形石けんは液体石けんに比べて、使用中に細菌汚染を受ける確率が高いからです。

固形石けんを使うときのポイントをおさえて、清潔な手洗い環境を整えましょう。

1.水で流しながら泡立てる

固形石けんを同居者や他の人と共用する場合、石けんの表面には前に使った人の汚れや菌が付着します。そのまま放置すれば菌は増殖し、次に洗う人の手に付着してしまいます。

水で流しながら固形石けんを泡立てることで、付着したものをある程度少なくすることができます。

2.使用後は水を切って乾燥させる

固形石けんの洗浄成分は水に溶け出す性質があります。そのため、使用後は水をきって乾燥させるように工夫しましょう。

大きい固形石けんは乾くまでに時間がかかりますから、石けんを小さく切り分けて使い、汚れてきたら交換するという方法も良いでしょう。

3.石けんケースのぬめりを取る

固形石けんをケースや台に置いている方も多いですよね。しかしケースや台が汚れていたり濡れたままだと、セラチア菌や緑膿菌といった細菌が繁殖してしまいます。

固形石けんと同様に、使用後はケースも乾燥させておくことが重要です。とりわけ水回りは菌が好む場所ですから、日頃からぬめりや水汚れをこまめに掃除しましょう。

出典:LOHACO

石けんを素早く乾燥させてヌメりを防ぐ「無印良品 発泡ウレタン石けん置き 250円(税込)」※定期的にスポンジを洗い、劣化したら交換することをおすすめします。

液体石けんの正しい使用方法

容器に入っている液体石けんでも、使い方や保管方法を誤るとかえって不衛生な状態になることも。

1.容器の吐出口に手を触れない

液体石けんの吐出口に直接手を触れると、吐出口から菌が入りこみ容器の中で菌が繁殖する可能性があります。

手を洗うときは吐出口に触らないよう注意し、吐出口に石けんや水が溜まっていたらティッシュやペーパータオル等で拭き取りましょう。

2.容器を洗浄してから詰め替える

液体石けんが細菌汚染を受ける要因として、容器の洗浄不足、濃厚原液を希釈調製する際の水の汚染、詰替え時の作業者の手からの汚染などが考えられます。

液体石けんの継ぎ足し使用はやめます。液体石けんの容器を再利用する場合は、残りの石けん液を廃棄し、容器をブラッシング、流水洗浄し、乾燥させてから新しい石けん液を詰め替えます。

厚生労働省「高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版」2019年3月

まず容器の中に残った石けん液を取り除き、容器を軽くブラッシングした後、十分に流水洗浄・乾燥させてから詰め替えます。このとき、ディスペンサーやポンプの吐出口を素手で触らないように注意しましょう。

手荒れ予防におすすめのハンドソープ5選

「無添加せっけん 泡のハンドソープ」ミヨシ石鹸株式会社

出典:LOHACO

  • 内容量:350ml
  • 価格:450円(詰替用は300ml/350円)
  • 成分:水、カリ石けん素地(脂肪酸カリウム)
  • タイプ:ポンプ式泡ハンドソープ

着色料・香料・防腐剤などの添加物不使用。洗浄成分は100%純石鹸分。本体ボトルはサトウキビ由来のバイオマスプラスチック使用で環境にも優しい。

「カウブランド 無添加せっけん」牛乳石鹸共進社株式会社

  • 内容量:100g
  • 価格:150円(3個パックは100g×3/450円)
  • 全成分:石けん素地
  • タイプ:固形石けん

着色料・香料・防腐剤・アルコール・品質安定剤など添加物不使用。天然油脂から約1週間かけて作られた国産石けん素地100%。天然由来の保湿成分がお肌にうるおいを残してくれる。

「ミューズ ノータッチ泡ハンドソープ」レキットベンキーザー

  • 内容量:本体機器+詰替え250ml
  • 価格:1,090円(税込)
  • 成分:サリチル酸、濃グリセリン、ヒアルロン酸、香料など
  • タイプ:自動泡ディスペンサー

殺菌成分、植物由来の洗浄成分配合。保湿成分のヒアルロン酸、ビタミンC誘導体、植物抽出成分配合で肌を優しく保護する。容器に触れることなく1回分の泡石鹸が出てくるので、周りを汚さず素早く清潔に。

「ウルルア 美容オイルinハンドウォッシュ」牛乳石鹸共進社株式会社

  • 内容量:本体220ml(詰替え420ml)
  • 価格:オープン価格
  • 成分:水、PEG-400、ココイルグリシンK、ラウリン酸Kなど
  • タイプ:ポンプ式泡ハンドソープ

美容液生まれの保湿系ハンドソープ。ホホバオイル、アルガンオイル、ローズヒップオイル、オレンジオイル、ユーカリオイル配合で手に潤いを与える。天然香料使用で心地よい香り。

「ホイップウォッシュ無香」サラヤ株式会社

  • 内容量:500ml
  • 価格:参考価格
  • 成分:イソプロピルメチルフェノール、濃グリセリンなど
  • タイプ:ポンプ式泡ハンドソープ

殺菌剤イソプロピルメチルフェノール配合。保湿成分のプラセンタエキスとローヤルゼリーエキス配合で肌を乾燥から守る。濃密な泡が手指の先までくまなく密着し、肌の摩擦を抑えながらしっかり汚れを落とす。

いかがでしたか?

「ハンドソープを使いすぎて手荒れした」という患者様が増えています。手洗いや消毒の前後には、保湿を忘れずにおこないましょう。

手荒れが治らないときは、早めにかかりつけの皮膚科医または薬局にご相談ください。

参考:日本石鹸洗剤工業会「せっけんメモシート(5)」
花王 製品Q&A「石けんはどんな成分からどのようにして作られるの?」
健栄製薬 手ピカジェルスペシャルサイト『感染症に関するトピックス「Vol.2 石鹸」』