皆さんは「ファシリティドッグ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
医療の世界では、動物たちが病気と闘う子どもたちの治療の補助として活躍しています。
アニマルセラピーとは
アニマルセラピー(動物介在療法)とは、動物と人間が共におこなう福祉活動の一つです。
動物たちと触れ合うことで、治療の補助やストレス緩和、活動性の向上を促すことを目的としています。アニマルセラピーを行うために特別な資格は必要ありません。
犬や猫を通じたアニマルセラピーのほかにも、馬と触れ合うホースセラピーなどが広く知られています。
セラピー犬と、ファシリティドッグの違い
セラピー犬が行う活動は、主に「動物介在活動」と呼ばれます。
例えば、月に何回か施設を訪問し、入居者の方々と触れ合うことで心のケアをします。活動する場所は限定されず、さまざまな施設を移動してまわります。
一方で、ファシリティドッグが行うのは「動物介在療法」。
アニマルセラピーの中でもより専門的かつ高度な訓練を受け、引退するまでの間をこども病院などの特定の施設で就業します。ファシリティドッグは、ハンドラーと呼ばれる臨床経験5年以上の医療従事者とともに生活・活動します。
2010年に静岡県立こども病院において、国内で初めてファシリティドッグが導入されました。
ファシリティドッグの主な活動
ファシリティドッグは、動物介在活動に加えて動物介在療法をおこないます。
手術室の中へ入ることが認められており、まさに心身に寄り添いケアする、立派な医療従事「犬」なのです。
ファシリティドッグの主な活動
- 手術前の子供に麻酔が効くまで側についている
- 点滴や注射、薬の服用を嫌がる子供に寄り添い、克服するお手伝いをする
- 眠りにつくまで添い寝する
- リハビリの付き添いをする
ファシリティドッグに選ばれる条件
セラピードッグは、良好な健康状態であることと、しつけができている家庭犬であれば基準を満たすことができます。
しかし、ファシリティドッグの場合は、厳しい適性審査が設けられています。
血統を50代以上さかのぼり、気質や信頼性が高い候補犬だけが選ばれ、厳しい訓練をハンドラーさんとともに受ける必要があります。多くの犬種はゴールデン・レトリバー種、ラブラドール・レトリバー種に限られると言われています。
約1~2年の訓練を終え、基準を満たした候補犬が、ファシリティドッグとして活動を始めることができます。
アニマルセラピーと医療の未来
先日、国内4例目となるファシリティドッグが誕生しました。その一方で、訓練施設が国内にないことや、費用面における高いハードルが課題となっています。
皆さんご存知のように、ファシリティドッグの他にも盲導犬や警察犬、災害救助犬など、ヒトの生活・生命を助けてくれる職業犬はたくさん存在します。
私たち薬局スタッフも、医療従事者として彼らを助け、支える存在でありたいと思います。ワンちゃんも、病気と闘っている人も、笑顔で幸せに暮らせる世の中になりますように。
参考:国立研究開発法人 国立成育医療研究センター「ファシリティドッグ」