「ペットボトル症候群」という言葉を聞いたことはありますか?
ペットボトル飲料の飲み方を間違えると、糖尿病などの生活習慣病を発症することがあります。
そこで今回は、ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)の主な症状や予防方法についてお話します。
ペットボトル症候群とは?
ペットボトル症候群は、正式名称を清涼飲料水(ソフトドリンク)ケトアシドーシスといいます。
糖質を多く含むジュースや炭酸飲料、スポーツドリンクなどを大量に飲むことによって発症する、糖尿病の一形態です。ペットボトル飲料に限らず、糖分が入った缶ジュースや紙パック飲料などでも、ペットボトル症候群を引き起こすことがあります。
ペットボトル症候群を発症する原因
糖分の入った清涼飲料水を飲みすぎると、体は高血糖状態になります。
血糖値の上昇は喉の渇きを起こし、さらに大量の清涼飲料水を飲む、さらに血糖値が上昇するという悪循環に陥ります。
通常は、血糖値を正常に戻すために膵臓(すいぞう)からインスリンが分泌され、糖を分解してエネルギーに変えるのですが、高血糖状態が継続するとインスリンの働きが悪くなり、血糖値が下がらないことがあります。
すると、糖の代わりにタンパク質や脂肪が分解されて、エネルギーとして利用されます。この脂肪を分解するときにできる「ケトン体」が増えると(=ケトーシス)、ペットボトル症候群の症状が現れます。
ペットボトル症候群の主な症状
主な症状は倦怠感、イライラ感、著しい喉の渇き、多尿、吐き気など。
重篤な場合は意識障害や死亡に至るおそれもあります。
ペットボトル症候群は10~30代の若者に多い
ペットボトル症候群の患者数は、10~30代の若年者を中心に増加傾向にあります。
1992年、清涼飲料水を水代わりに1日2~3リットル飲む生活をしていた高校生が、意識障害を起こして病院に運ばれました。
後に、意識障害の原因は「清涼飲料水の大量摂取による急性の糖尿病である」と日本糖尿病学会より報告され、世の中の関心を高めました。
2005年アメリカでは、子どもの肥満増加や若者の2型糖尿病※の増加を受けて、公立学校での甘い清涼飲料水の販売が停止されました(ダイエット・ノンカロリー除く)。
※2型糖尿病はインスリンが分泌されるものの働きが弱まったり(インスリン抵抗性)、インスリンの分泌量が減る(インスリン分泌低下)ことで血糖値が高くなる病気。遺伝的要因だけでなく、生活習慣などの環境要因が影響すると考えられている。
飲みすぎ注意!糖質量が多い飲み物
市販飲料や清涼飲料水には、どれくらいの糖質が含まれているのでしょうか?
コーヒーや紅茶に使われる、スティックシュガー(1本あたり3g)に例えてみましょう。
主な市販飲料に含まれる糖質の量※
市販飲料 | 容量 | 炭水化物(糖質)量(g) | スティックシュガー(3g)換算 |
炭酸飲料(コーラ) | 500mlペットボトル | 56.5 | 19本 |
炭酸飲料(果汁入り) | 500mlペットボトル | 57.5 | 19本 |
炭酸飲料(サイダー) | 500mlペットボトル | 55.0 | 18本 |
スポーツ飲料水 | 500mlペットボトル | 約20~30 | 7~10本 |
オレンジ果汁濃縮還元ジュース | 200ml紙パック | 21.0 | 7本 |
ぶどう果汁濃縮還元ジュース | 200ml紙パック | 24.0 | 8本 |
野菜ジュース | 200ml紙パック | 約13~15 | 4~5本 |
トマトジュース | 200ml紙パック | 約7~10 | 3本 |
乳酸菌飲料 | 65~80ml | 11.5~14.5 | 4~5本 |
コーヒー飲料 | 210g缶 | 14.4 | 5本 |
コーヒー飲料(小) | 185g缶 | 12.7 | 4本 |
栄養ドリンク | 125ml瓶 | 19 | 6本 |
特保炭酸飲料(コーラ) | 480mlペットボトル | 6.7 | 2本 |
※飲料メーカーが掲示している成分表示の炭水化物量に基づき糖質量を算出
ジュースや甘い炭酸飲料に限らず、健康的なイメージのある野菜ジュース、特保の炭酸飲料にもスティックシュガー数本分の糖分が入っていることが分かりますよね。
「カロリーゼロ」「ノンシュガー」「無糖」の落とし穴
「カロリーゼロ」や「ノンシュガー」といった栄養表示基準は、食品表示法に基づいた食品100g(ml)あたりの含有量で決められています。
カロリー(熱量)
100g(ml)あたり5kcal未満であればカロリーゼロ・ノンカロリーなどと表記することが可能。
糖質(糖分)
100g(ml)あたり0.5g未満であればノンシュガー・シュガーレス・無糖と表記することが可能。
⇒つまり、「無糖=糖質0グラム」「カロリーゼロ=0カロリー」という意味ではない!!
例えば、ここに100mlあたり0.4gの糖分が入った【飲料A】があります。糖質の量は100g(ml)あたり0.5g未満ですので、栄養表示基準上は「無糖飲料」と表記することができます。
この【飲料A】の500mlペットボトルを3本飲んだ場合は、0.4g(糖分)×5(500ml)×3(本)=6g=スティックシュガー2本分の糖分を摂取したことになります。
「カロリーオフ」「糖質オフ」にも要注意
「カロリーオフ」は、100g(ml)あたりのカロリーが40kcal未満(飲料は20kcal未満)の商品に表記されます。
「糖質オフ」は、100g(ml)あたりの糖質量が2.5g未満の場合に表記可とされています。
お分かりの通り、カロリーゼロや無糖の表示基準よりも多くの糖分が入っていることになりますので、過剰摂取しないよう注意しましょう。
ペットボトル症候群にならない飲み物の選び方
日頃の水分補給や喉の渇きには、水やお茶で十分です。
ただし、激しい運動や、炎天下で屋外活動をおこなう人、特別な指導者の下で特別な活動をされている人(部活・訓練など)は、経口補水液やスポーツドリンクなどで塩分補給をおこなってください。
また、ペットボトル症候群の予防策として、
- 糖分の入った清涼飲料水を買い置きしないこと
- 一気飲みしないこと
- 水やお茶でお腹を膨らませてから飲むこと
- ながら飲み(テレビや映画を見ながら飲むこと)を習慣化しないこと
- 適度な運動をおこなうこと
などがあります。
「いつも以上にのどが渇く」「原因不明の倦怠感や吐き気がある」などの体調変化がみられるときは、早めにかかりつけの医療機関を受診してください。
参考:消費者庁「〈事業者向け〉食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン第4版」、公益社団法人日本糖尿病協会「糖尿病に関するQ&」