皆さんは「腸管出血性大腸菌」という言葉をご存知でしょうか?

O111・O157と聞くとピンときた方も多いはず。食中毒は一年を通して発生するもので、最悪の場合は死に至るおそれがあります。

そこで今回は、「腸管出血性大腸菌感染症(O157など)の症状と感染予防」について解説します。

この記事の目次

腸管出血性大腸菌(O157)とは

大腸菌とは、家畜や人の腸内に存在する菌のことです。

そのほとんどは害がありませんが、人に下痢やなどの症状を引き起こすものとして「病原性大腸菌」があります。

病原性大腸菌は100種類を超える血清型があると言われます。

病原性大腸菌のなかでも、ベロ毒素という毒素を出し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こすものが「腸管出血性大腸菌」と呼ばれます。

代表的なものはO157、O26、O111などで、特にO157は感染力が非常に強く、重症化すると死に至ることがあります。

※血清型…細胞表面の抗原を基に分類した微生物、ウイルスあるいは細胞の型のこと

腸管出血性大腸菌(O157)の主な感染経路

感染経路のほとんどは、菌に汚染された飲食物を介した経口感染です。

家畜などの糞便にも見られ、糞便で汚染された水や飲食物を口にすることでも感染します。

O157はとりわけ感染力が強い病原大腸菌です。

一般的に細菌性食中毒は、100万個以上の菌が体内に入らないと発症しないと言われています。

しかしO157の場合は、わずか100~1,000個程度の菌が体内に入るだけでも、あっという間に食中毒を起こしてしまいます。

腸管出血性大腸菌(O157)による食中毒の原因と発生件数

O157グラフ
出典:国立感染症研究所ホームページ「腸管出血性大腸菌感染症とは」

国内では、レバー等の生肉や加熱不十分な肉類・生野菜・井戸水で感染する事例が多くみられます。

海外では、農業用水で二次汚染を受けた生野菜を食べて感染したという事例も報告されています。

また、O157はその感染力の強さから、集団食中毒の事例が多いという特徴があります。

※平成27年より、食品衛生法に基づき「豚のお肉や内臓を生食用として販売・提供すること」が禁止されています。(関連記事のサイトへ移ります)

腸管出血性大腸菌(O157)の感染ピークは6~9月

日本の感染症発生動向調査(NESID)によると、2014年以降は3,500~4,000件の間を推移しています。

いずれの年も5月頃から増加し始め、8月頃がピークとなって、夏場に最も多く報告されています。

腸管出血性大腸菌感染症届出数(2020年3月30日現在)

診断年届出数(無症状病原体保有者※1含む)有症者数死者数
2014年4,1562,8390
2015年3,5682,3380
2016年3,6472,24610
2017年3,9042,6061
2018年3,8552,5840
2019年3,7442,5110
2020年※22501580

※1. 患者発生時の積極的疫学調査や調理従事者などの定期検便などにより発見される。※2. 2020年のみ調査期間が1/1~3/27

腸管出血性大腸菌(O157)の主な症状

腸管出血性大腸菌感染症は多くの場合、3~5日の潜伏期をおいて、激しい腹痛を伴う水様便の後に血便となることがあります(出血性大腸炎)。

中には、全く症状が認められないケースや、軽い腹痛や下痢で終わるケースがあります。

他の細菌性腸炎と比べると高熱になりにくく、発熱があっても一過性の場合が多いとされています。

乳幼児や高齢者などは重症化しやすく、死に至る場合もあります

重症合併症で死に至る危険も

主な症状が認められる者のうち、約6~7%の患者において、初期症状発症から数日~2週間以内に「溶血性尿毒症症候群(HUS)」や脳症などの合併症を発症すると言われています。

「溶血性尿毒症症候群(HUS)」を発症すると、死に至る危険性もあります。

激しい腹痛や血便がある場合は、自己判断で市販薬等を使用せず、早めに医療機関を受診しましょう。

腸管出血性大腸菌(O157)による集団食中毒と二次感染

1996年、大阪府堺市で学校給食を原因とした学童集団下痢症が発生しました。

患者数は児童を含む9,523名にのぼり、その内3名の児童が死亡するという大変痛ましい事件となりました。

2017年には、関東地方の惣菜店で販売されたポテトサラダなどを食べた人がO157食中毒に感染。20名以上の患者のうち、3歳女児の尊い命が奪われました。

こうした集団食中毒の事件以降、全国のスーパーマーケットや食品販売店では衛生管理が見直されています。

買う側・食べる側も、二次感染を起こさないための対策(汚れた手でトングを触らないなど)を心がけましょう。

腸管出血性大腸菌(O157)の6つの予防策

1.食品を購入するとき

  • 食品を購入する時は、賞味期限を確認して新鮮なものを選ぶ
  • 肉や魚類などは水分が他の食品に付着しないように、ビニール袋に分けて入れる
  • 購入後は、できるだけ早く帰宅して冷蔵庫に入れる

2.食品を保存するとき

  • 肉や魚は水分がこぼれないように注意し、ビニール袋などに包んで冷蔵庫に入れる
  • 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下の状態を保つ
  • 冷蔵庫や冷凍庫の容量に対して、約7割程度になるように食品を整理する

3.下準備をするとき

  • 台所まわり(まな板、包丁、調理器具、手を拭くタオルやふきん等)を清潔にする
  • 石鹸で手首から爪の先までしっかり洗う
  • 野菜などの食材も水で洗って汚れを落とす
  • まな板や包丁は、肉用・魚用・野菜用で使い分ける
  • 肉・魚・卵を扱ったあとは、手やまな板・包丁を洗剤で洗う
石けんを手に出す

4. 調理するとき

  • 調理器具を肉用・魚用・野菜用で使い分ける
  • 加熱調理をする際は、中心部の温度が75℃以上で1分間以上加熱する
  • 特に肉や魚は生焼けにならないよう十分に注意する

5. 食べるとき

  • 食事前は必ず石鹸で手を洗い、食卓の上をふきん等で拭く
  • 料理を盛り付けるときも、清潔な箸やお皿を使う
  • 一度調理したものは、できるだけ早めに食べきる

O157は室温に15~20分放置しただけで、2倍も菌が増殖すると言われています。

6. 食べ残しがあるとき

「色が変わった」「異臭がする」など、少しでも食品に変化がみられる場合は口にしないよう注意しましょう。

  • 食べ残しは、未使用の清潔な容器・食器に移して保存する
  • 時間が経ちすぎている場合は処分する
  • 残った食品を後日食べる時は、75℃以上を目安に再度中心部まで十分に加熱する
  • スープや味噌汁は沸騰するまでしっかり再加熱する

 

参考:国立感染症研究所「腸管出血性大腸菌感染症とは
政府広報オンライン「食中毒予防の原則と6つのポイント」令和3年6月8日