皆さんは「認知症サポーター」という言葉をご存知でしょうか?

今や認知症ケアは、医療従事者や介護従事者に限ったことではありません。超高齢化社会や老老介護に備えて、認知症ケアについて学ぼうという人が年々増加しています。

そこで今回は、誰でもなることができる「認知症サポーター」についてお話します。

認知症サポーターってなに?

認知症サポーターとは、「認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする※1」ことが主な目的です。

「サポーター」の言葉が表すように、特別な事をする人というわけではなく認知症の人の応援者として活動します。患者様やそのご家族の相談にのったり、認知症サポーター養成講座で得た知識を生かしてアドバイスをおこないます。

国内の認知症サポーター数は1,300万人以上にのぼります。(令和2年12月時点)

認知症サポーターに求められる知識

勉強する手元

認知症サポーターになるためには、認知症サポーター養成講座を修了しなければなりません。

サポーター養成講座は、認知症の症状や診断・治療・予防などの基本知識を習得するとともに、認知症の人や、認知症介護をしている人の気持ちに対する理解を深めるものです。

基本カリキュラム
  • 認知症とはどういうものなのか
  • 中核症状(記憶障害・見当識障害・理解判断力の障害・実行機能障害・感情表現の変化)
  • 行動・心理症状とその支援
  • 認知症の診断・治療、予防
  • 認知症の人と接する時の心構え
  • 認知症介護をしている人への理解
  • 認知症サポーターにできること

無料で受講できる養成講座

認知症サポーター養成講座は全国各地の自治体や企業・職域団体が開催しています。

原則として受講費は無料。特別な資格は必要なく、一般の方も受講することができます。受講を修了すると認知症サポーターの証である “オレンジリング” が渡されます。

周りに認知症の人がいたり、ご家族や地域住民を支援したいという方は挑戦してみてはいかがでしょう。

認知症サポーターロゴ

認知症研修認定薬剤師との違いは?

薬剤師の世界には「認知症研修認定薬剤師」という制度があります。

この制度は、認知症の領域において、薬に関わる専門的立場から質の高い薬物療法に貢献するだけでなく、医師・介護・福祉チームと連携して適切な対応ができるようになることを目的としています。

認知症サポーターは誰でもなることができますが、認知症研修認定薬剤師は薬剤師だけが修得できる専門資格です。認定薬剤師になるためには必要な要件がいくつも定められています。

認知症研修認定薬剤師になるための資格・要件

認知症研修認定薬剤師になるための資格・要件として、全11項目が定められています(令和2年度実施要項参照)※2。必須資格・要件の一部をご紹介します。

  • 薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格と見識を備えていること
  • 認知症サポーターを取得していること
  • 薬剤師としての実務経験が3年以上あること
  • 日本薬局学会が指定する認知症領域のe-ラーニングを20単位以上有していること
  • 日本薬局学会が認定するワークショップで6単位有していること
  • 認知症の人への介入事例を3つ以上提出していること

地域の健康相談役として認知症の早期発見に努め、患者様やそのご家族の相談に応じ、薬学的な視点をふまえた助言や対応をおこないます。

薬剤師を目指す学生に知ってほしいこと

私たち薬剤師は、研修会や勉強会を通して最新の知識習得に励んでいます。例えば、薬剤師認知症対応力向上研修では、認知症の疑いのある人の早期発見や、認知症の方の状況に応じた適切な薬学的管理などの知識を深めます。

薬剤師の研修については「薬剤師のための在宅医療研修~中心静脈栄養の輸液調製~」でもご紹介していますのでぜひご覧ください。

薬学生の皆さんは薬剤師免許の取得を目指してがんばっていると思います。

しかし、薬剤師免許を取得した後が”本当の本番”です。晴れて薬剤師になったら、「日々学習」と思って研鑽を積んでいってください。

参考※1 地域共生政策自治体連携機構「認知症サポーターキャラバンとは」、※2日本薬局学会 認知症研修認定制度ホームページ