突然ですが皆さん、お口のケアは万全にできていますか?
お口の衰え、は体の衰えに先行してやってくるとも言われ、身体全体の健康にも悪影響を及ぼす恐れがあります。これが「オーラルフレイル」です。
ご自身やご家族のお口の衰えを予防して、健康長寿を目指しましょう。
オーラルフレイルとは?
オーラルフレイルとは、お口に関するささいな機能の衰えや、それに伴う心身の機能低下と過程のことをいいます。
噛む、飲み込む、味わう、話す、呼吸するといった口腔機能が加齢とともに衰えると、栄養不足や筋力低下、気持ちの落ち込みなどを招くことがあります。
オーラルフレイルの原因は心身の衰えだけでなく、社会的なつながりが弱まることも関係しています。
食べづらい・話しづらいという状態が続くと、食事が楽しくなくなって食欲が減少したり、人との会話を避けたり外出を控えることで、お口や舌だけでなく全身の衰えにつながる可能性もあります。
オーラルフレイルの症状は見逃しやすく、本人も周囲も気づきにくいという特徴があります。介護を必要としない健やかな暮らしを長く保つためにも、お口のささいな変化に気づき、予防や改善に努めることが大切です。
オーラルフレイルの主な症状
オーラルフレイルの症状には、次のようなものがあります。
- 滑舌が悪くなった
- 固い物が食べづらくなった
- むせることが増えた
- よく食べこぼすようになった
- 口の中が乾燥する
- 口のニオイが気になる
- 少ししか食事を食べられなくなった
オーラルフレイルの危険性はないか、次の質問に答えてお口の状態をチェックしてみましょう。合計点数が3点以上の場合は「オーラルフレイルの危険性あり」となります。
はい | いいえ | |
半年前と比べて、固い物が食べづらくなった | 2点 | |
お茶や汁物でむせることがある | 2点 | |
入れ歯を使用している | 2点 | |
口の中が乾燥する | 1点 | |
半年前と比べて、外出の機会が減った | 1点 | |
さきいか・たくあん程の硬さの物を噛むことができる | 1点 | |
1日に2回以上は歯を磨く | 1点 | |
1年に1回以上は歯科医院を受診している | 1点 |
東京大学高齢社会総合研究機構 田中友規、飯島勝矢:作表
合計点数が3点以上の方は、かかりつけの歯科医院に相談することをおすすめします。
オーラルフレイル予防のための「パタカラ体操」
お口や舌の機能低下を防ぐには、どうすればよいのでしょうか?
噛む力や飲み込む力を維持するためには、お口周りの筋肉を鍛えることが効果的です。
パタカラ体操をやってみよう!
パタカラ体操とは、その名の通り「パ」「タ」「カ」「ラ」の4文字を発声しながらお口を動かす体操のこと。
それぞれの文字を、5文字ずつ3回発声します。
「パパパパパ、タタタタタ、カカカカカ、ラララララ」を3回繰り返すというわけです。ただ単に発声するのではなく、お口や舌の筋肉を意識して行うことがポイントです。
毎日継続して行えば、噛む力や飲み込む力を維持したり、滑舌やいびき・歯ぎしりの改善にも効果が期待できます。
①「パ」唇をしっかり閉じる
食べ物をお口の中からこぼさないようにするトレーニング
②「タ」舌を上あごにしっかり押しつける
舌で食べ物を押しつぶしたり、飲み込みやすくするトレーニング
③「カ」舌をのどの奥へ引く
食べ物をのどの奥へ取り込み、食道へ運びやすくするトレーニング
④「ラ」舌先をまるめて前歯の前につける
お口の中の食べ物を飲み込みやすくするトレーニング
©はじめよう!やってみよう!口腔ケア
オーラルフレイル予防のための「唾液腺マッサージ」
唾液には、歯茎や舌などの粘膜を保護する、食べ物の消化を助ける、お口の中を洗浄するといったさまざまな働きがあります。
しかし、唾液は加齢とともに分泌されにくくなり、食べ物が食べづらくなったり、お口の中を清潔に保てなくなります。さらに外出や人との会話が減少すると、お口の乾燥が進行します。
唾液腺マッサージをおこなって、唾液の分泌を促進し、お口の中を潤いある健康的な状態に保ちましょう。
唾液腺マッサージをやってみよう!
①耳下腺マッサージ
耳の前方や、上の奥歯のあたりの頬に指をあててやさしく押す。これを5~10回程繰り返す。
②顎下腺マッサージ
あごの骨の内側のやわらかい部分に指をあてて、耳の下からあご先にかけてやさしく押す。これを5~10回程繰り返す。
③舌下腺マッサージ
あごの先の内側(舌の付け根あたり)に親指をあてて、下あごから押し上げるように押す。これを5~10回程繰り返す。
図は全て「はじめよう!やってみよう!口腔ケア」配布資料より引用
災害時のオーラルケアと誤嚥性肺炎
災害時の避難生活では、断水や洗面所の数不足などの事情により、普段通りに歯を磨くことができず口腔衛生が悪化する恐れがあります。
お口の中の細菌が増殖すると、細菌が唾液とともに肺に流れ込むことで、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。この誤嚥性肺炎は加齢とともにかかりやすい病気で、65歳以上の場合は生命にかかわることも少なくありません。
出典:Teramoto, et al. J Am Geriatr Soc.2008
災害関連疾病に関する調査によると、東日本大震災では、地震発生から約1~2週間後にかけて肺炎が原因で亡くなった人の数が最も多かったと報告されています。
避難所では、人前で入れ歯を外すことがはばかられたためか、入れ歯を付けっぱなしにしていた方も多く、これらがきっかけで誤嚥性肺炎になる事例もあります。避難所生活や水不足の状況でも、お口を清潔に保てるように防災対策を工夫しましょう。
参考:「Mouth&Body Topics VOL.3人々の健康を口から守る ~災害時の誤嚥性肺炎予防の事例から~」サンスターグループ
水や歯ブラシがない時のオーラルケア
避難所生活で歯ブラシがないとき、水が不足しているときは十分に歯を磨くことができません。
緊急時は、どのようにしてオーラルケアを行えばよいのでしょうか?
水も歯ブラシもないとき
ハンカチやティッシュを指に巻き付けて、歯の表面や、頬の内側をやさしく拭き取ります。
口腔ケア用のウェットティッシュも販売されています。災害用備蓄としてひとつ持っておくと便利です。
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水またはお茶が少量あるとき
食後に、30mlほどの水やお茶を口に含みます。歯間の食べかすを取り除くように、グチュグチュとしながら口全体に水を行きわたらせます。
朝起きた時、食後、就寝前などにこまめに行うと良いでしょう。
水はないが歯ブラシがあるとき
うがい薬、液体歯みがきなどが手に入ったときは、水の代わりに用いましょう。
適量の液体歯みがきを口に含んですすいだ後、歯ブラシでブラッシングします。
高齢の方は液体歯みがきに慣れていない場合があります。いざという時のために、ご家族や施設の方が、液体歯磨きの使い方を教えてあげると安心です。